国産万年筆の字幅とペンポイントとインクフロー

万年筆の、特にペン芯からニブにかけての構造(というか機能)は、基本的にはどのメーカーも同じなわけですが、それ故にメーカーごとの哲学の現れる部分でもあると思うんです。
国産万年筆大手といえば、パイロット、セーラー万年筆、プラチナ万年筆の3社ですが、ペン先を比べてみると、それぞれの哲学がありそうです。
特に細字をどう実現しているのか? というのが非常に興味深いんです。
まずは基本的な考え方として、ペンポイントを小さくして字幅を細くするアプローチと、インクのフロー(流量)を絞って字幅を細くするアプローチがあるかと思います。
前者のアプローチを取っているのがプラチナ万年筆でして、インクのフローを十分に確保しつつ、ペンポイントはとにかく小さく作ってあります。
この考え方では、ペンポイントを小さくできればできただけ字幅を細くできるわけで、3社の中で唯一プラチナ万年筆だけが UEF(超極細)のペン先をラインナップしている一つの要因のような気がします。
ただペンポイントが小さくなればなるほど紙との摩擦と言うか、引っ掻く感じはどうしても強くなっちゃうんですよね。
その対策としては、抵抗感の少ない紙を使うとか、粘度が高めのインクを使うとか、「これが味ってもんよ」と諦めるか。かなぁ?
逆にインクのフローを絞って字幅を細くしてるっぽいのがパイロットです。
プラチナ万年筆とパイロットで同じ字幅のペンポイントを見比べてみると、「ええっ!」て声が出ちゃうくらいパイロットのペンポイントの方が大きいんです。
このアプローチの利点としては、ペンポイントが大きい分、紙を引っ掻く感じを少なくできるので、とにかく書き心地がいいんです。
これぞ万年筆! というスラスラ感を実現できるわけです。
逆にデメリットとしては、インクを選ぶんですよね。ちょっとでもフローの渋いインクを入れようもんなら字が掠れたりするわけです。
もちろんパイロット製のインクを使う分には問題ないのですが、特に海外製のインクを入れたりすると、いろいろと悩ましい事態になったりします。
で、その中間に位置するのがセーラー万年筆で、そこそこ小さめのペンポイントに、そこそこのインクフローという感じです。
お! だったらとりあえずセーラー万年筆を選んでおけば良さそう! と思いたいところなんですが、実は3社の中で一番個体差があるのもセーラー万年筆な気がするんですよね。
もちろん、なんとなくですが。
ですのでセーラー万年筆の製品については、試筆をしてからの購入を強くオススメしたいところです。いや、ほんとに。
以上の傾向から、万年筆らしい書き心地を求めるならパイロットを、いろいろなインクを試してみたいとか、とにかく細字をというのであればプラチナ万年筆を、いろいろなインクを試してみたいけど引っ掻き感は少ない方がいいというのであればセーラー万年筆を選ぶと、失敗は減らせるかも。
とはいえ、上記の書き心地に関しては F とか EF の話でして、M とかの太めの字幅になると、メーカー毎の違いはあまり気にならないかも・・・。とは思いますけどね。
ここからは蛇足になりますが、国産のインクと海外製のインクを比べてみた場合、傾向として国産インクの方がフローが良い気がします。これは国産万年筆の EF の細さに由来するのではないかと、個人的には思ってますけど。
逆に言うとプラチナ万年筆の UEF に、字が細めに出る海外製のインクを入れると、そりゃもう超絶細字になるんじゃないかと思ってたりします。試したことないけど。
機会があればペリカンのエーデルシュタインのオニキスなんか試してみたいものです。