万年筆のペン先の個体差についての考察
万年筆のペン先(ニブ)には個体差ががある。というのは良く言われることだし、実際にお店で試筆させてもらっても感じることなのですが、何でそうなるのよ? というところを考えてみました。
だって、今どきの工業製品の工作精度ってすごいじゃないですか、それなりにバラツキはあるんでしょうけど、まず気づかないレベルですよね。
それが万年筆だと顕著に感じるのは何で? って思うじゃないですか。万年筆だけ工作精度が低い? というのは考えにくいですしね。
で、考えたんですけど、一つには製造過程がね、ちょっと特殊というのがあるんじゃないかなと。
以前にペリカンのニブを作ってるところの動画を見たんですが、ニブにペンポイントを溶接してからスリット(切れ込み)を入れるんですよね。まぁ、それはそうでしょう。
ただこの時点では、スリットは等幅の見れ込みでしかないはずです。
その動画には収録されていなかったのですが、万年筆のスリットって先に行くほど狭くなってますよね。ということは、どこかで詰めてるはずなんですよ。
この「詰める」という工程が個体差を生む原因の一つではないかな? と思うんです。
だって、溝を詰めるわけですから、伸ばすか撚るか曲げるかしないといけないのですが、そこに素材の特性も相まって、加工直後は良くても時間がたつとズレてくるとか、するんだろうなと。
ほら、金属って曲げたり捻ったりしてもしばらくすると少し戻ったりするじゃないですか。ああいう感じ?
しかもニブというのは基本的に合金ですから、部分部分で組成が微妙に違ってるってのもあるだろうし。つか、全くの均一な組成の合金なんて作れるんですかねぇ? どうなんでしょ?
とにかく、このスリットを詰めるという工程が個体差を生む原因であろうと思うわけです。
あと個人的にですが、鉄ペンの方が個体差に言及されることが少ないように思います。
もっともコレは、高いお金を出したのに・・・。という金ペンに対する期待感の高さから、より個体差(違和感?)を顕著に感じてしまう。というのもあるかもしれませんけど。
でも本当に鉄ペンの方が個体差が少ないと仮定すると、実は金ベースよりも鉄ベースの方がスリットを詰めつということに向いてるのかな? とも思ったりして。
もしくは、工作のノウハウの蓄積として、スリットを詰めるよう行為に対しては鉄ベースの方が確立されているのかな? とかとか。
まぁ、ホントのところなんて、作ってる人に聞いたわけではないので分からないんですけどね (^_^;)
あとは、細字のペン先だと、ペンポイントの両側が削ってあったりするわけですが、削るタイミングがスリットを詰める前なのか? 後なのか? でもいろいろ変わってきそうな気はします。
個人的にはスリットを詰めた後で削ってるんだろうな。という気はしてますけど。なんとなく。
もちろん、だから何よ? という話ではあるのですが、そうやって考えると、個体差も仕方ないのかな? という気はしてきます。
逆に個体差が少ないと言われるメーカーのペン先に組成とか、工作過程とか、気になりだしたりして。もっとも、組成はともかく(調べれられれば分かりますから)工作過程は企業秘密でしょうけどね。